暑く寝苦しい夜のこと・・・
暑く寝苦しい夜のことです。寝付けない子どもが「先生、暑くて眠れない」と言います。エアコンを入れるほどの気温ではないのですが梅雨のせいで湿度が高くむし暑い夜です。ふと思い立ってうちわの代わりになるものはないがと辺りを見まわすと、使用済みのノートの背表紙が目にとまりました。厚紙できたうちわの代用品で子どもをに風を送ってあげると、「今度はこっち」と時々寝返りをうちささやかな涼を楽しんでいるかのようでした。「先生、手、疲れない?」など殊勝なねぎらの言葉が漏れたかと思うとほどなく寝入ったようでした。その時、同じように寝苦しい夜寝床の傍らに座ってうちわで幼い私をあおいでくれた母を思い出しました。通勤電車にさえ冷房が普及していない時代で、エアコンなどよほど恵まれた家庭でなければいれておらず、もちろんわが家にもエアコンなどありませんでした。いったいどれほどの回数そんな風にうちわで私をあおいでくれたのか、母が他界した今知る由もありません。ただ半世紀も前の母の繰り返された行いが、この夜子どもにささやかな涼を送る行為へと私を導いたといえないでしょうか。近いうちに本物のうちわを買い求めることにしましょう。
小林
が書きました