自立
当直明けの早朝、配膳をしているとこの時間によく顔を合わせる子どもの声が、ガランとした食堂に響きました。「なぜ学校に行くのかわからなくなった」この子はかなり遠くの学校に通学しているとのことで、日が短い季節にはまだ真っ暗な早朝、制服姿で一人で食堂で朝食をとっているのをよく見かけますが、私に「先生朝早くから大変だね、私はここに住んでいるけど、先生は他から通ってくるんでしょ」などとねぎらいの言葉をかけてくれることもあります。その子が、ふと「なぜ学校に行くのかわからなくなった」という言葉を発したのです。子どもは言葉を継いで言いました。「進学するために、今の学校に通っているんだけど、なんで進学するんだろ」問いは必ずしも私に向けられたものではなかったのですが、思わず私は答えました。「これまでは他の子どもが学校に行っているから、とか大人から学校に行くように言われたからと自分に言い聞かせて学校に通っていたかもしれないけど、これからは自分で考えなければならないね」と。3月は終焉の季節であり、新たな出立を間近に控える時節でもあります。ここに、一人の子どもが自立への新たな一歩を踏み出そうとしているのだと感じ、こころを動かされました。
<小林>
が書きました