学園日記

贈り物

2014年06月08日|この記事のリンク

学園で働くようになって、子どもたちがお正月、誕生日、クリスマスをはじめ、色々な機会に様々な方々から様々な形の贈り物をいただくのを見てきました。ある時、贈り物ということについて、遠い昔、私が学生の頃授業で読んだフランスの文豪アナトール・フランスの幼少期の思い出を綴った一文が記憶の底から蘇りました。
幼いアナトールは刺繍をしている母の足元で遊んでいたところ、ふいに、母が、壁紙に描かれた無数のバラの中の一つに刺繍針で十字の印をつけ、「このバラをお前にあげる」と言いました。そして、「その一輪のバラの贈り物はこのうえもないほど私を幸福にした」とフランスは述べています。
幼いアナトールを「幸福」にしたのは形ある「もの」ではなく、母との関係や言葉、絵という「こころ」によってしか捉えられない「こと」であったわけです。さすが、後に文字だけを駆使して人を「幸福」にする文学の世界で達人になった人とその母だけのことはあるなと改めて感心しました。同時に「もの」に溢れた現代における「贈り物」について考えさせられました。

<小林>

職員
が書きました
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